自動車やバイク向けへチタンボルトを販売していると、必ずと言っていいほど「チタンの強度は大丈夫なのでしょうか?」と尋ねられるシーンが多いです。
Google等で調べてみるとわかるのですが、ほぼ全てのチタン販売店さんには同様の記事が記載されていることからも、それら問い合わせと回答は常に繰り返されているものだと想像することができます。
強度に問題ないのか?が最も多い質問ですが、簡単に考えるならば強度が低い=クラックが入りやすい=耐久性がないと連鎖的に想像されているケースが多いようです。
話を掘り下げて聞いてみると「チタンマフラーがすぐに破れた」とか「以前、他メーカーのチタンナットを装着したがすぐに緩んだ」等の意見が多いのですが、マフラーに関してはGr,2純チタン材を使用しているケースが多いので、そもそも材質が全く別物であるケースで、他メーカーのナットに関してもGr,2純チタンを使用していたり素材その物が不確かな場合もあるようです。その他多いトラブルとしては”ガジリ"になろうかと思いますが、これも同じくGr,2で生じるトラブルでありGr,5では報告事例は少ないのです。
みなさんがご存知の通りGr,5チタンボルト/ナットは低重量かつ高強度を持つ金属ですので、レースパーツをはじめ航空機や人工衛星へも使用されています。もちろん、それら航空宇宙産業への使用というのは先に述べたメリット以外に耐久性も含め、溶接ではなくボルト/ナットでは定期的に取り外してメンテナンスもできますので、結果として安心して使うことができると認識されているためです。
また、耐久性に的を絞りますと、金属の耐久性を調べるためには耐力テストにてシュミレートを行います。第三者機関からの情報によりますと、10万回連続の応力耐久テストの結果では耐力が50%まで低下するというテスト結果が有ります。私達が使用しているGr,5(64チタン)は新品時の耐力が850前後です。 半分まで性能が落ちたとしても430程度です。
アフターマーケットホイール等で最近採用され始めているT7075(スーパージュラルミン)は新品時の性能が490ですので、劣化が進んだGr,5でも新品のジュラルミンを若干下回る程度です。
参考までにサーキット/レース系で定評のあるクロムモリブデン鋼は耐力が高く900前後ありますが重量はチタンの約2倍です。さらに言うなら、チタンでもスーパージュラルミンでもクロモリ鋼であっても10万回テストの結果では、すべての金属が50%程度まで耐力が低下することが確認されています。
事実上、金属疲労の目安は相当なまでに緩やかでありますので、金属そのものの問題よりも異物噛み込みや締め込みミスによるガジリが生じてしまい交換を強いられるほうが早いと思われます。タイアの着脱が多い場合は特にホイールのボルトホールと干渉してネジ山を潰すケースや金属粉を巻き込むケースもありますので注意していただき、パーツクリーナー等でクリーニングを行うこと。ご予算が許すならば定期的な交換を行うことにより、より安心してお使いいただくことができると思います。
Gr,5チタンは金属の消耗が少ない事はメリットでありますが、世界中にはGr,5と謳いながらも他金属を使用しトラブルになっているケースも有るためネガティブな情報があるようです。ただ面白いことにネガティブな情報はクルマ/バイク/サイクルなどの一般人が手軽に入手できる世界だけの話であり、自動車メーカーや2輪バイクメーカー、先にも書きました航空宇宙産業においては「Gr,5チタン合金が弱い?何言ってるの??」的な答えが返ってきますが、そこは私達とはマーケットが異なりますのでその点だけに絞るとなかなか共感できない悩みであったりもするのです。
Comments